ほんとうに何もしてない

去年内分泌系の病気を発症してからというもの、入院や投薬治療や検査で慌ただしくしていて、症状が峠を越えた頃には今年の三月が終わっていた。

症状が一番きつかったときは自力で寝床から離れるのも大変だったので、一日の大半を寝転がって、音楽を聴きながら過ごしていた。わたしは音楽がこの上なく好きで、友達には趣味人間と呼ばれていた。入院中も、一日6時間以上は聴いていた。音楽を聴くと心が落ち着くし、居場所を感じられる。

 

音楽を聴く体力すらないときは、ひたすら布団にくるまって、どうやってこれからの人生を生きていこうか考えていた。

というか、考えてしまっていた。目標や計画を練るような前向きな思考ではなくて、だいたいは「誰がこんな人生とわたしを肯定できようか」とか、もれなく自己否定感に包まれたものだった。

周りに病気を責めないでいてくれる相手があまりいなかったので、せめて自分くらいは自分の味方でいなければやっていけないな、と痛感した。

 

症状が落ち着き(基本的に完治はしない病気だ)、相当張り詰めていた気持ちが溶けた。病気になる前より自己肯定感が増し、気持ちと体調を最優先に考えるようになった。

やっと思い通りに体が動かせるようになってきて、ようし、これからがんばるぞと思った。

 

が、どうにも体が動かない。

症状が一番きつかった時期はたくさん音楽を聴いていたが、ここ数ヶ月は抜け殻のようになっていて、ほんとうに何もしていない。音楽もほとんど聴いていないし、ほかの趣味もほとんどしていない。趣味人間の自覚があった身としては、自分がこんなに趣味を放棄しているのは初めてで、戸惑いがある。

ニュースも見ないし、友達との連絡もあまり取らない。読書も勉強ももちろんしていない。この文章を書くのもわりとめんどくさくなってきている。

 

毎日することといえば、ラジオ体操と、寝転がってボーッとするくらいだ。一方で、心身の調子はまあまあで、特にしんどいこともない。

 

たぶん、病気が一番悪かったあいだ、体力やメンタルの不調とは別の何かがものすごい勢いで消費されて、それがまだ充分に充電されていないという気がする。病状の悪化は肉体的にも精神的にも削られるが、そこから回復したり、悪化を防いだりする気力を保つのもだいぶきついんだろうな、と思う。

 

ただ、さすがに一生この調子で生きていくわけにはいかない(というか、この調子ではいつか生きていけなくなる)ので、そろそろ鞭を打つような感じで普通の暮らしができるようにしていきたい。

 

年が明けるまでは社会復帰できないので、家の中にいても時間を意識できる方法はないかと考えた結果、中古のたまごっちを買った。たまごっちは規則正しい時間に起きて、一定の時間が来ると容赦なく呼び出し音を鳴らすので、わりと効果がある。

今日は一日のタイムスケジュールを書くつもりだ。1/3でも達成できたら進歩だ、そもそもタイムスケジュールを書けたらわたしは最強だ、くらいの気持ちでやっていく。